エンデの遺言

エンデの遺言

■ファンタジーは未来から学ぶための素材- 現実逃避や空想の冒険を楽しむためではない
- ファンタジーによって将来起こるかも知れないことを具体的に思い浮かべる
- そこを起点にして新しい規準を作る
- 過去に学ぶのではなく未来を具体的に空想し、そこから学ぶ·

■スイスの経済学者ビンズヴァンガーは無限の進歩という幻想を作り出した近代経済は中世の錬金術と同じと言っている·

■1997年と1998年でノーベル経済学賞の評価の軸足は100%変わった
- 97年はデリバティブズの価格形成理論で実績を上げたショールズとマートンが取った
- 98年は当時主流だった新古典派経済学を批判し、福祉や倫理的な動機付けを視野に入れたインドのアマーティア・セン教授が取った
- ショールズとマートンは自身の価格形成理論を用いてヘッジファンド運用会社を経営したが、この会社が巨額の損失を出して倒産したことも考慮されたのかも·

■シルビオ・ゲゼルは「老化するお金」のコンセプトを提唱した
- ゲゼルは「お金で買ったものはジャガイモでも靴でも老化するのに購入に使ったお金はなくならない。これはモノと貨幣で不当競争が行われていることになる」と指摘した
- 有名なケインズの一般理論には「我々は将来、マルクスよりもシルビオ・ゲゼルの思想から多くを学ぶだろう」という言葉がある
- このゲゼル理論を用いて1929年の世界大恐慌後、オーストリアのヴェルグルという町で一ヶ月に1%ずつ価値が減少する貨幣を導入したところ、貨幣の流動性が高まって不況が解消したという事例がある·

■お金は現代の神として振まっている
- エンデは小説「ハーメルンの死の舞踏」でお金が神のように崇拝される姿を描いた
- 確かにお金には一般的に神のものとされる特質が備わっている
- 例えばお金は不滅で、人を引き寄せ、あるものを別のものに変える·

■エンデの見るところ、最大の問題はお金がモノを交換したりするための道具であったのに、それ自体価値を持って商品として流通することになったことである·

■思想家のルドルフ・シュタイナーは社会を三分節化する社会三層論を建てた
- 社会全体を精神と法と経済に分ける
- 精神生活では自由が、法生活では平等が、経済生活では助け合いが基本理念であるとエンデは説いている
- この文節はフランス革命のスローガンだった自由・平等・博愛とそのまま対応する近代社会の理想を表してもいる
- エンデは今日の社会の問題は、この三つのレベルの異なる事象がいっしょくたにされて別のレベルの理想が混乱して語られていることにある、としている·

■マルクスの思想は根本的には正義に立脚している
- マルクスは資本家に弱者である労働者がひどい搾取をされているのを直接目撃した
- 倫理的に、これを何とかしなければいけないと考えたのは正しいが、それと彼の思想がメカニズムとして機能しなかったのは別の問題だ
- マルクスは地平から日がほっておいても昇るのと同じようにプロレタリアートによる革命から労働者の独裁が成就し、そこで新しい人間が出てくるとしていたが、結局は何も起こらなかった·

■エンデは読書のあり方にも鋭い疑問を投げかけている
- 「Mエンデが読んだ本・親愛なる読者への44の質問」で「数人の人が同じ本を読んでいるとき、読まれているのは本当に同じ本でしょうか?」という質問を投げかけている
- エンデは本という作品は、読者と本との一対一の関係の中で始めて完結するものであって、本自体で完成した作品にはならないという考え方を持っていた
- エンデはいつも、現代人は「この本は要するに何を言っているのか」という質問に捉われてしまった、と嘆いていた
- 陳腐な決まり文句や、簡単なメッセージ·

■流動しない金には流動性プレミアムが無いはず
- 貨幣、金やプラチナ、債権とうの財はそれぞれの流動性に応じたプレミアムがつく・・・・これを流動性プレミアムという·

■ディーター・ズーアは、流動しないお金、モノに変わらないお金には流動性プレミアムが無いのだから減価させるべきだと説いた· しかしこの議論はヘン・・・流動性プレミアムは「流動させようと思ったら流動させられる」という一種の権利料なので、いま流動していないから流動性プレミアムを原価させる、というのはそもそもおかしい??·

■実はケインズも国際通貨制度改革に関して、1943年にマイナス利子率を持つ国際通貨=バンコールのシステムを提案した
- いわゆるケインズプラン
- このシステム下では、国際清算同盟の黒字諸国は国際通貨として考えられたバンコール建て残高にマイナスの利子率が課され、そのことで対外交易を加速させながら国際収支の維持均衡を図ることが考えられた
- この案は米国のホワイト案に破れ、このホワイト案をもとに現在の国際金融秩序が出来上がった·

■プラス利子率のシステムは恒常的・偏在的であったわけではない
- 古代エジプトでは減価する貨幣システムが使われていた
- 農民は国庫に収穫物を納め、対価として貨幣を受け取る
- この貨幣は国庫の収穫物にかかる修造費用とネズミ等に荒らされる分だけ減価するようになっていた
- そうすると農民はなるべく早くそのお金を使って豊かさを維持しようとする- 農民は「なるべく長い間価値が残るようなもの」をお金で買おうとする・・・それはかんがい施設の整備や土地の改良である
- つまり土地が生んだ豊かさをお金のままで維持せず、長期的に自分の利益になるようなものに注ぎ込んだ
- このためにナイル川流域は非常に豊かな穀倉地帯になった
- これを破壊したのがローマ人・・・ローマ人はエジプトを占領してプラス利子率のシステムに全部切り替えた結果、農業に対する長期視点での投資が激減してナイル川流域の穀倉地帯は荒れてしまった
- 中世の欧州でも減価する貨幣システム=ブレクテアーテが存在した・・・このシステムの下で中世欧州人はエジプト人と同じように中長期的に自分たちの豊かさにつながるようなものに投資した。それはカテドラルである
- 当時のカテドラルは巡礼者を呼び寄せ、町に繁栄をもたらすという経済的な意味と、キリスト者たちに対する救いという宗教的な意味で中長期的な投資対象だった·

■プラス利子率では人類の未来に遺産を残せないかも
- なぜこのようなことが行われたかというと減価する貨幣だとなるべき長期的な利益になるようなものにお金を変えようとするから
- 逆にプラス利子の場合は、お金が利子を生むスピード以上で短期的に利益を生み出すものが交換=投資の対象になる
- 典型的な例は日本の林業・・・今のお金のシステムだと林業に投資しても回収に時間がかかりすぎるので、木は伐採して売り払う方が利益率が高い
- その結果、海の磯焼けと言われる砂漠化を引き起こすことになった
- いま、中世の人が残したような1000年後の人々への何者かを、我々は日々作っているのかを考えなければならない