ウェブは資本主義を超える 池田信夫

ウェブは資本主義を超える 池田信夫
 
· ■個人をプロセッサ、組織をネットワークと考え、情報処理コストと通信コストのどちらが相対的に高いかによってネットワークの構造が変わる
- 情報処理コストがネットワークコストより相対的に高いときには情報を中央集権的に処理して端末に送ったほうがよい
- 逆に通信コストが高い場合は端末で分散処理して通信料を減らしたほうがいい·

■広告費だけでなく販促費を視野に入れることで大きな市場が期待できる
- 日本の広告費は約6兆円でGDPの約1%である・・・この水準は一定しており、この中で市場を食い合っている以上は大きな成長は期待できない
- 一方、日本における顧客へのマーケティング費用の総計は20兆円、世界全体では100兆円くらいあるとされている
- グーグルが狭義の広告産業を超えて従来のどぶ板営業を代替するものだとすれば、広告市場を越えた大きな成長機会をつかまえるかも知れない·

■インターネットに関連したビジネスではサービスのリリースタイミングが死命を決する重要性を持つ
- Web2.0という言葉はコンピューター中心からネットワーク中心への移行という概念を含んでいるが、これは昔サンやオラクルが流行らせようとした「ネットワーク・コンピューティング」とか「シン・クライアント」といった概念に近い
- これらの概念は論理的にはありえたのだろうが、いかんせんダイヤルアップの時期に出てきたのは早すぎた
- 普通、一度失敗したビジネスモデルは二度とものにならないが、ムーアの法則(半導体の集積度が18ヶ月で2倍になるという経験則)によってコストが3年で1/4になるITの世界では、3年前に赤字だったビジネスモデルが、いまやったら黒字、ということがありうる
- グーグルは検索エンジンのパイオニアでもなければ、検索広告の発明者でもない・・・問題はそういう技術をどう組み合わせてどういうタイミングで世に出すかという、まさに戦略の問題なのである·

■ブラウザにインターフェースをすべて依存するようになるとOSの存在意義が薄まる可能性がある
- ネットスケープの登場によってウィンドウズは単なるデバイスドライバなる(マーク・アンドリーセン)· ■マイクロソフトの失敗は広告経済モデルの軽視
- チーフ・ソフトウェア・アーキテクトとしてビル・ゲイツの後継となるレイ・オッジーは「インターネット・サービスによる破壊」という内部文書でマイクロソフトの失敗の原因を分析している
- その第一に、パッケージソフトの販売という伝統的な収益源にこだわって広告による経済モデルを軽視した結果、インターネットによる効率的な流通システムの開発に遅れをとった、という点をあげている·

■ビスタはIBMと同じになるかも知れない
- かつでのIBMは超高性能な大型コンピューターを守ろうとしてPCという破壊的イノベーションに敗れた
- 大した新機能もないのに大きなメモリを食うビスタは典型的な持続的イノベーションが、顧客期待価値を超えて余計な機能を付加している様相になっている·

■権利処理の自動化には定型的なプロセスの設計が必要
- 権利処理を自動化するには、まず権利を一本化し、許諾権を切り離して報酬請求権のみとし、ライセンス料に定価を定めるなど、定型的な処理手続きを作る必要がある·

■ウィキペディアのルールでは、最終的には精度は担保されない
- ウィキペディアは「最終的に信頼できる情報源」にリーチ出来ることを目的にしており、真理の提供を目的にしていない- ここで言う信頼できる情報源とは別途定義されており、それはたとえばニューヨーク・タイムズやBBCで、実はウィキペディアは「信頼できない情報源」に分類されている
- このように明文化されたルールだけを根拠として正当性そのものの考察に踏み込まないこと、それが真理であるかどうかを問わない、という考え方は法学でいう実定法主義(Legal Positivism)であるが、これは仲間内メディアでは機能するが、信頼できるはずの情報源が信頼できないとき、機能しない
- たとえば従軍慰安婦に関して、ニューヨークタイムズもBBCも「慰安婦は日本軍の性奴隷制度だった」と報じており甚だしい事実誤認をしている
- こういうケースでは信頼できる情報源が信頼できない、ということになり、このルールは機能しない·

■百科事典はそもそも啓蒙思想の最大の成果であった
- 百科事典は18世紀にディドロとダランベールが編集した「百科全書」が最初
- 教会による知識の独占の時代を乗り越え、神学による学問支配を乗り越え、個人による自由な知の集積を作る作業の成果であった·

■多くの官庁や大企業の取り組みが失敗に終わったのに、一人の不良青年が作った2ちゃんねるが、これほど多くのユーザーをひきつけている事実は、失敗した大事業の関係者たちはもう一度考えて見るべき·

■マスコミの誇大なあおりにだまされてはいけない
- 治安が悪化して犯罪が増えている、とマスコミは煽るが実態はそうではない
- 統計上の犯罪の数は増えているが、その最大の原因は自転車の防犯登録によって、自転車泥棒を犯罪統計に入れるようになったことや、警察が犯罪被害の届出を受理s内「前裁き」がへったことなど、犯罪の「認知率」が上がったためで、こうした効果を除くと犯罪はほとんど増えていない
- さらに、殺人や強盗といった凶悪犯を見れば、戦後一貫して減っておりピーク時の1950年代の1/3以下になっている
- また検挙率が下がったというマスコミもあるが、これも母集団が増加したことと、軽微な犯罪や余罪の追及に要因をさかなくなったことでほぼ説明がつく
- また、いじめが社会問題化している、というトーンもおかしい
- 子供の自殺は70~80年代がピークで、このころも「いじめ」が最大の原因として騒がれた
- 現在、自殺件数はピーク時の半分であり、いじめが原因と見られるものも当時は毎年10件くらいと、現在の6件より多かった
- そもそも年間で6とか10とかいう数字からして、「稀有」な事件というべきで社会問題として取り上げる問題ではない
- うつ病で年間1万人以上自殺しているのは取り上げず、いじめや極悪犯罪など、耳目を集めやすいニュースを誇大に取り上げることで視聴率を上げようとしているだけである
- 付け加えれば、ごみ焼却炉から出るダイオキシンがワイドショーで一時期頻繁に取り上げられたが、これらの寿命への影響は1.3日であり、喫煙の10年以上、また受動喫煙の120に比べればはるかに影響