Sunday, April 8, 2012

ブリコラージュとICU


先日、レヴィ・ストロースの説いたブリコーラジュがイノベーションにおいて重要なコンセプトになる、という話を書いて、ではその実際の事例が何かということを考えていたのですが、一つ思いついたのが米国による宇宙開発がそれなんだよな、ということで、備忘録としてここに記しておきます。

米国における宇宙開発のリーダーシップはケネディに端を発していて、ケネディ嫌いの僕としてはずっと、あれは莫大な税金の無駄遣いだったと、小学生の頃からずっと(親の影響もあって)思っていたのですが、最近、宇宙開発は典型的なブリコラージュの事例なのかも知れない、と思うに至っています。

米国におけるアポロ計画は、いろいろと毀誉褒貶がありますが、僕が知る限り、現代の社会に莫大なプラスインパクトをもたらしている点が、少なくとも一点あって、それは医学の領域なんです。

何だとおもいますか?それはICU、Intensive Care Unitなんですよね。

ICUというのは、患者の身体に、生命に影響を及ぼす様な変化が起こったらすぐにそれを遠隔で医師や看護士に知らせるというシステムですが、このシステムは、宇宙飛行士の生命や身体の状況を、やはり遠隔地からモニターして、何か重大な変化が起これば即座に対応するという、アポロ計画の様な長期の宇宙飛行においての必要性から生じた技術なんです。確かに、アポロ13を映画で見ていると、身体の内部と外部の環境をモニターして、大きな変化があると即座に手を打つという、ICUに求められるシステムが、そのまま実現されていることがわかりますよね。

アポロ計画の様な、壮大な無駄使いに見えるような取り組みからでも、人類にとって必要欠くべからざる様な技術やシステムが、生み出されているということを、(僕を含めて)多くの人は実は知らないんですよね。これは典型的なブリコーラジュと言えます。ケネディの脳内に、この宇宙計画によって、派生的に人類にとってものすごく有用な智慧が生み出されるはずだという確信があったとは、とても思えないのですが、この計画を完遂することによって、何か重大な智慧が、それを完遂するものにもたらされるはずだという「曖昧な予感」がもし、関係者の中にあったのだとすれば、まさにそれは、マト・グロッソのインディオたちがもっていた野性的な知性だったのだと思わざるをえないのです。

翻って、現在のグローバル企業においては、「それは何の役に立つの?」という経営陣の問いかけに答えられないアイデアは、資金供給を得られないことが多いのですが、ちょっと待って。世界を歪める様なイノベーション(©スティーブ・ジョブズ)は、「何となく、これはすごい気がする」という直感に導かれて実現しているのだということを、我々は決して忘れてはならないのだということを、改めて考えるわけです。

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