Wednesday, January 30, 2013

交換から贈与へ

西欧において本格的に「贈与」の問題を取り上げた最初の人は文化人類学者のマルセル・モースです。モースはポリネシアを広く踏査して、彼らの経済活動が西欧的な「等価交換」ではなく「贈与」の感性によって駆動されていることを発見し、それを西欧社会に紹介しました。


しかし、考えてみれば、全ての仕事は本来「贈与」とそれに対する「お礼」の組み合わせによって成立していたはずであって、もしかしたら現代という時代の方が例外的なのかも知れません。

その様に考えてみると、いろいろな可能性が見えてきます。

今、殆どの人は、自分の能力や感性を会社に対して提供し、会社からその対価として給与をもらうという、一対一の等価交換の構図で経済活動を行っています。

僕らはこの「一対一の関係性」というものを所与として、仕事はそういうものだ、と疑いも持たずに考えているけれども、考えてみればこういう構造が普遍性を持つ様になったのはこのたった100年くらいのことです。

資本主義の台頭とともに株式会社という「富を創造するプラットフォーム」が形成された結果、労働力の取引コストを社会的に低めるために、この「一対一の関係性」が形成され、それは多くの人にとって疑い様のない「当たり前」となりました。

でも、ネットがこれだけ普及して、能力とニーズをヒモ付ける社会的なコストが劇的に下がった時代においては、この「一対一の関係性」は、なにか時代遅れなモノに感じられなます。

例えば、自分の能力や感性に希少性を感じてくれる人がいれば、その人たちに「贈与」し、いくばくかのお礼をもらうことで生きていけるかも知れない。この人にこれからもずっと音楽を作ってもらいたい、というファンを千人持てた音楽家は、そのファンから月に千円のカンパをもらうことで十分豊かに生きていけるでしょう。

そして、その「贈与」と「感謝」の関係性は、とても健全な充実感、自己効力感を贈与した人に与えてくれます。ついでに言えば、僕が依拠している経済学や経営学も、その学問の体系を根本から修正せざるを得ないことになるかも知れません。そう考えるととてもワクワクします。

そういう時代が、もうすぐそこまで来ていると思うのですよね。


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