アンラーンのすすめ

あけましておめでとうございます。

昨年中は一方ならぬご支援を各方面からいただき、本当に有り難うございました。
本年は、公的・私的を問わず、生活をより充実したものにしたいと思って努力する所存ですので、これまで通りのご指導・ご鞭撻を宜しくお願い致します。

実は、昨年末に生まれて初めて「来年の目標」なるものを作成し、とてもよいものが出来たので折りに触れて読み返すことで自らの居住まいを常に正していきたいと思っているのですが、今日はその中の一つのテーマである「アンラーン」について少し書きたいと思います。

アンラーンとは「ラーン=学ぶ」の逆ということです。無理やりに日本語にすれば反学習ということになるでしょうか?「再」学習ではなく「反」学習。つまり、一度学んだことをまっさらにしてしまうということです。なぜ、貴重な時間という資源を投資してせっかく学んだことをまっさらにしなければならないのか?理由は簡単で、環境の変化がとても早くなっているからです。十年前には有効だったコンセプトやフレームワークがどんどん時代遅れになり、新しいコンセプトやフレームワークにとって変わるということが起こっているのが現代です。

一つわかりやすい例を挙げましょうか。

1997年にチェスの世界チャンピオンであるガレリ・カスパロフはIBMのスーパーコンピューター「ディープブルー」と対戦し、敗れました。コンピューターが(人間の)チェスの世界チャンピオンに初めて勝ったということで当時は大変な話題になったものです。

その翌年、IBMはディープブルーの能力を更に5倍程度に増強し、これを一億円で販売し、それなりの販売成績を収めたようです。201413日の時点では、IBMのウェブサイトを確認すると、ディープブルーは、その後NASAの火星無人探査機「マーズ・パスファインダー」のプロジェクトや米国エネルギー省のローレンス・リバモア研究所などで活用されたという報告が掲載されています。

さて、この一億円で売り出されたディープブルー(改)ですが、現在皆さんが日常的に使っているデスクトップのPCには、ほぼ同じ性能が備わっていると申し上げたら驚かれるでしょうか。しかし本当のことなのです。この、たった17年間のあいだに、一億円の価格で販売され、政府や大手シンクタンクにしか購入できなかったスーパーコンピューターとほぼ同等の性能のコンピューターが、家庭の主婦にも購入できるようになっているのです。

一億円といえば都内一等地の高級マンションや最高級のスポーツカーの価格と同等ですが、これらの物品の価格が20年足らずの間に10万円まで落ちるとはとても考えられません。しかし、情報処理の分野ではそういうことがここ50年ほど起き続けているのです(インテルの共同創業者であるゴードン・ムーアが、集積回路の密度は毎年二倍になるという、いわゆるムーアの法則を指摘したのは1965年のことです)。

これを逆さまに言えばつまり、今日一億円かかるコンピューターは、17年後には10万円程度になるということでもあります。僕は最近いろんなところで「多くの人がコンピューターと仕事を奪い合う時代がすぐに来る」と書いたり話したりしていて、この話題についてはまた別にポストしたいと思いますが、現在、コストがかかり過ぎるという理由でコンピューターに代替されていない仕事の多くは、恐らくごく短期のうちにコンピューターによって代替されることになるはずです。

そして、その変化はビジネスモデルや社会の有り様にたいしても大きな変化を与えることになる筈です。その様な、大きな変化が継続的に起こっている世界において、一度学んだコンセプトやフレームワークに執着し続けるのは、怠惰を通り越して危険ですらあると言えるのではないか。こういった世界に生きる僕らは、常に「昔とった杵柄」を廃棄し、常に虚心坦懐に世界を眺めながら、自分が学んできたことをアンラーンし続けることが求められよなあ、というのが今の心境です。