Thursday, December 4, 2014

「真似る」と「学ぶ」



高橋悠治:
それはね、あの人は武満トーンと言われるような独特のカラーを持っている反面、すごくほかの影響を受けやすい人なんだよ。

谷川俊太郎:
そうだね。

高橋悠治:
だから、たとえば篠田さんの『乾いた花』という映画の音楽を彼といっしょにやったときに、僕がタイトルバックの音楽を書いたわけ。そのときに、偶然性の記譜法を使った。すると彼はそれをすぐに取り入れて、そしてもっとうまくやるわけだよ。だから、こういうのはやっぱり危険だという気がした。

谷川俊太郎:
なるほどね。

高橋悠治:
それから、彼に、「世界がいかに在るかではなく、それが在るということこそが不思議だ」というヴィットゲンシュタインの言葉による曲《スタンザⅠ》があるね。ヴィットゲンシュタインというのは、僕がニューヨークにいて、彼が遊びにきたときに、ちょうど僕はその本を読んでいて彼に教えたわけ。そうしたら、すぐ曲になってしまった。でもストラヴィンスキーが言っているね、「いい作曲家は盗む、悪い作曲家は真似する」と。結局こういう違いだよね。そもそも伝統の修業というのはそういうことでしょう。「芸を盗む」と言うんだからね。それで、彼は何を取り入れてきてもきれいにできちゃうんだよね。だから、わりとすぐに受け入れられるでしょう。僕はそれはちょっと問題があるという気がずっとしてた。彼はいつも対位法の勉強をしたいなとか、次の曲では変わりたいとか言っていた。

谷川俊太郎:
しょっちゅう言ってたね。

高橋悠治:
ちょっちゅう言っているんだけど・・・・

谷川俊太郎:
変わらなかった?

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