まだまだ知らないことがある、という幸せ

フランシス・プーランクの名前は学生時代から知ってて「あのキラキラコロコロした室内楽を書く作曲家でしょ?」くらいのイメージはもっていました。たとえばこんなのが典型的なやつですね。


これはオーボエとピアノのソナタです。フルートの方が一般には有名かも知れないけど僕はこちらの方が好きかなあ・・・まあいずれにせよ、こんな感じの曲です。プーランクは生粋のパリッ子でしかも大金持ちの製薬会社オーナーの息子ですから、いかにも19世紀末のブルジョア家庭の子弟が感じるアンニュイがそのまま音楽になったような雰囲気ですよね。

ということで、そういう作曲家だ、というイメージのままに二十年以上特に聴き込むこともなく過ごしていたのですが、先日読んだ坂本龍一さんの本で、プーランクが敬虔なカトリックで20世紀の中頃になってなおカンタータを書き続けていたという事実を知りまして、聴いてみて本当に驚愕したんですよね。なぬー!?ほとんどグレゴリオ聖歌じゃんかー!?


和声的にはちゃんと三度の音が入っているし、完全五度ばかり用いるグレゴリオ聖歌とは音楽の作り方が全然違うんですが、なんというか、あれほど現代的なエスプリを濃密にまき散らしていた人が、こんなに懐古的なニュアンスの曲を書いていて、かつ本人の弁によると「自分が本当にコミットしていたのはカンタータ」ということで、本当にビックリしてしまったんですよね。どういう感じだったんだろ。

知ってるつもり、というテレビ番組がありましたけど、美術史とか音楽史って、本当にまだまだ知らないことがあって本当に幸せだなあ、と思ってしまったんですよね。ちなみに上記の曲は「人間の顔」という曲ですね。変な題名。坂本龍一さんのお勧めは下記の盤でした。もしよければ是非どうぞ。「癒し」が得られますよ。