キャリアにリスクを持ち込むと楽しくなる


最近、就職以来、一度も転職したことがないという人に続けて何人か接して感じたんですが、そういう人たちにとっては「会社内での地位」が、ものすごく人物評価の大きなウェイトになっているんだということを知って、ちょっと驚いています。

何度も転職している自分にとっては職場内の昇進はほとんど「なりゆき」で決まることを知っているので、「あの人、あの年で局長だよ、すごいよね」とか言われても、「はあ、そうですか・・・」と困惑するしかありません。

ハーバードのジェフリー・フェファはこれを実証研究して、コンピテンシーの高低と昇進のスピードや地位の高さには相関がまったくないことを明らかにしていますが、一つの会社にい続けると、そういうのが見えなくなるんでしょうかねえ。

ちなみに論文はこれね。
https://www.slideshare.net/johnnemo/power-by-jeffrey-pfeffer-key-takeaways

そう仰っているご本人にとっては、人物評価を相対化するだけのバックグラウンドがない、つまり「会社=社会」になってしまっているので、その会社内での評価=地位が、人物全体の価値を決める尺度としてとても大きなウェイトを占めているんでしょうけれども、これはキツイ・・・地獄でしょうね、僕には生きていけない世界だったんだな、と改めて思います。

雇用の不安定な外資系のプロフェッショナルファームにい続けるということは、傍目にはストレスフルな人生に見えるかもしれませんが、全く逆で、たくさんの職場にかつて釜の飯を一緒に食った人がいて、まずい「なりゆき」になったらいつでもその人たちを頼れるというオプションを持っているというのは、とても精神的に健全でいられるんです。

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最近話題になっているナシーム・ニコラス・タレブの「反脆弱性」にも、キャリアにリスクを持ち込むことで、人生を「脆弱の逆」、つまり「反脆弱」なものにできる、一方でキャリアをローバストにしようとしてリスクを除外するとかえって脆弱になってしまう、と主張していますが、これは全く実感値とも符合します。


今、久しぶりにイノベーションに関する第二弾の書籍を書こうかと思っています。過去20年のあいだ、様々な経営学者さんがイノベーションに関する方法論を体系化しようとしてきましたが、結果的にはどれもうまくいっていませんよね。もう多くの人が感じていることだと思うんですけど、こういう「イノベーションの方法論」というのはどれも茶番だったということでそろそろ過去を清算する時期に来ていると思います。

僕は最初に出したイノベーションに関する書籍で「そもそも予定調和させるという考えが間違っている」ということを指摘しましたが、力不足もあって、なかなかこのメッセージは浸透していない。というところに、この「反脆弱性」という話が出てきて、ああ、これはいい側方支援をもらったなと思っています。

ということで、キャリアにしてもイノベーションにしても、リスクファクターが減ってしまうとかえってシステムは脆弱になってしまう、ということでしょうか。自分の状況を改めて振り返ってみると、反復の仕事が増えて予測可能性が高まっている、つまりタレブ的にいうと「脆弱」な状況になっているような気がするので、もう少し「予測不可能性」を人生に取り入れて生きたいと思います、はい。

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