皆さんもよくご存知の通り、昨今の日本では、50歳を過ぎた「いいオトナ」による不祥事が後を絶ちません。
例を挙げていけばキリがないので、ここではここ数年のあいだに起きた不祥事の中でも、シニアの劣化を象徴的に示す事件を取り上げ、振り返ってみたいと思います。
日大アメフト部監督による暴行指示。
狛江市市長などの高位役職者によるセクハラ。
神戸市教育委員会等によるいじめ調査結果の隠蔽指示。
財務省による森友・加計問題に関する情報操作。
大手メーカーによる度重なる偽装・粉飾。
公共交通機関などでの暴言・暴行。
これらの事件・不祥事をならべてみると、いくつかの共通項があることがわかります
まず、事件の中心となっているのが、50歳〜60歳代という、一昔前で言えば「長老」と言われてもおかしくないような、しかも「男性」によって引き起こされているということです。
例えば民営鉄道協会が発表している平成27年度に発生した駅係員・乗務員への暴力・暴言に関する調査集計結果によると、加害者の年齢構成は、60代以上が188件と最多であり、これに50代による153件が続いています。
一方で、一般に感情のコントロールが上手にできないと考えられがちな「若いもん」=20代以下の数値は16.0%となっており、年代別では最も少ない。
本来、社会常識やマナーの模範となるべきシニアが、簡単なことでキレて騒いで暴れているわけで、まったく「最近の古いもんはなっとらん」としか言いようがありません。
二つ目の特徴として挙げられるのが、その内部指向性です。神戸市教育委員会による調査結果の隠蔽、三菱マテリアル子会社における前社長の顧問就任人事、財務省職員による国交省記録文書の差し替えなどに共通しているのは、内部の関係者の立場を守りたい、組織の体面を汚したくない、という内向きなものです。
組織の内部と外部では当然ながら利害が相反する局面が出てくるわけですが、このような不祥事を引き起こした個人・組織に共通しているのは、その組織が社会的に担っているアジェンダや責任から乖離し、ただひたすらに組織や組織内の個人の利権を維持しようという動機で動いている、という点です。
三つ目に指摘できるのが、その幼稚性です。他省庁に出向いて「書類を確認させて欲しい」とリクエストした上で文書を差し替えるとか、偽装を主導した社長を解任した次の日に顧問として採用するといった、普通に見識を持ったオトナであれば、普通に「これはヤバいだろ」というような稚拙な対処が結果的に露見することで不祥事が明るみに出ています。
もちろん、その対処が生き馬の目を抜くような鋭いもので、なかなか露見しないということになれば、これはこれで困ったことになるわけですが、ここで私が指摘したいのは、こんなにも子供じみたことでトラブルを回避できると考える、幼稚な思考回路を持った人が、それなりに責任あるポジションについているのはどういうことなのか?という問題です。
つまり、これらの不祥事を引き起こしているのは「幼稚で内向き志向のオッサンたち」ということになるわけです。
これらの事件の直接的な決着の仕方は、往往にして事件を主導した「劣化したオッサン」を処罰・更迭して終わり、ということになるわけですが、そのような対処を繰り返しても問題の根本的な原因は解決されないように思います。
というのも、すでに指摘した通り、50代以上のオッサンたちが集団として劣化しているということであれば、個人として不祥事を起こした責任者を更迭するという表面的な対処ではなく、そもそも責任のあるポジションを、こういった劣化した集団に占拠させておいて本当にいいのか?という問題が浮かび上がってきます。
わかりやすく言えば、この国を50代以上のオッサンたちに任せておいて良いのか?という問題です。
これはなかなか簡単に答えの出る問題ではないのですが、近代以降、同じような状況に陥った日本が、どのように対処したかを知っておいても損ではないでしょう。
近代以降、日本において「最近の古いもんはどうなのかねえ」という嘆息が社会的な嵐となったことが二回あります。一度目は明治維新前夜、二度目は太平洋戦争終了直後のことです。
維新の場合は各藩の大名にお引き取りいただき、終戦の場合は公職追放という形で戦争指導者をパージしました。
両者ともに実質的に革命といって良い変化が起きたわけですが、ではそのポイントはなんであったか?
それは「プロテスト」と「エグジット」です。
プロテストとは、より若い立場、弱い立場にある人たちが、その時点での社会の既得権益者に対して「おまえら、それはオカシイだろ!」と声をあげる、ということです。
エグジットとは、より若い立場、弱い立場にある人たちが、その時点での社会の既得権益者の支配の及ぶネットワークから離脱し、新しいネットワークを築くということです。
ということで、では具体的にどのようにして「プロテスト」し「エグジット」していくのか、という点については、あらためてまた書きたいと思いますが、いずれにせよ大事なのは、このまま任せておくとこの国はますますひどいことになるのは明白であり、劣化したオッサンたちをうまくリプレースしていくことが、まずは重要なのだということは覚えておいて欲しいと思います。