コンプライアンス違反が止まらない本当の理由

僕が「今後の日本企業からはコンプライアンス違反が続発するだろう」と指摘したのはちょうど二年前のことでした。

http://artsandscience-kipling.blogspot.jp/2015/10/blog-post_29.html

残念ながらこの指摘は的中し、三菱自動車、東芝に続いて、今年は神戸製鋼の問題が発覚して、現在マスコミから袋叩きにされています。

コンサルタントとして、これら三つの会社と接触のあった立場からいうと、こういう問題を起こす会社にはどこか「独善的」なところがあるように思うんですが、それはまた別の機会に話すとして、今日は、これらのコンプライアンス違反を防止するために、多くの企業で取り組まれている罰則規定に始まるルール改定やオンブズマンなどの告発制度の施行ではこの問題を解決できないだろうな、ということです。

というのも、こういったコンプライアンス違反が起きる最も根本的な原因は、企業と従業員の力関係にあると思うからです。

コンプライアンス違反を犯そうとする組織があったとして、当然ながらそれを問題だと思う内部者はいたはずです。ではこのとき、その内部者は具体的にどのようなアクションがとり得たでしょうか?具体的には次の二つ、


  1. オピニオン
  2. エグジット


ということになります。

オピニオンというのは「これはおかしい、ヤメたほうがいい」と意見する、ということで、エグジットというのは「こんな取組には俺は関わらないよ、やーめた」といって仕事から遠ざかる、あるいは会社を退職するということです。

この「オピニオンとエグジット」というのは、従業員に限らず、組織がなにかおかしな方向に向かいそうになった時に、その組織の構成員やステークホルダーが取れる抵抗策とか考えられます。

例えば株主の場合であれば、経営陣の経営がおかしいと思えば、株主総会で「おかしいだろ、それ」とオピニオンを出すことができますし、何度オピニオンを出しても経営が改善しないということであれば、株を売るということでエグジットすることができます。

顧客も同じで、売主のサービスや商品に文句があるのであれば、クレームという形でオピニオンを出しますし、それでも状況が改まらなければ購買を中止するという形でエグジットすることができる。

したがって、健全な組織の運営にはステークホルダーに対して、この二つの権利を行使してもらう自由を与えたほうがいいわけですが・・・では、日本企業でこれがどうなっているかというと、ほとんど行使できないわけです。

なぜ行使できないか?
従業員のその企業への依存度が高すぎるからです。

株主も顧客もエグジットが容易にできるのは、代替手段があるからです。株主であれば別の会社の株を買う、顧客であれば別の企業からサービスや商品を購入すればいい。

しかし従業員はそれがなかなかできない。その組織へオピニオンを出して上司や権力者から嫌われたら?他のオプションがあれば出世の見込みのない組織などさっさとヤメて別の組織に移ればいいわけですが、シングルキャリアで他のオプションを持たない人にとって、これは非常にリスキーな選択でしょう。エグジットも同様です。

要するに、雇用の流動性が低い、パラレルキャリアを持つ人が少ないというのが、日本でコンプライアンス違反を是正させる組織内の圧力が弱まる根本的な原因なんですね。

これは本人にとっても不幸なことです。

誰しも、お子さんを持つ人は「インチキはいけないよ」ということを教えているでしょう。子供にそう言っておきながら、大人は組織ぐるみで大々的なインチキをやっているわけで、そんなことを長く続けていれば人格的にバランスを崩さないわけがありません。

昨今に日本では大人の精神疾患が一種の社会現象と言っていい水準で広がっていますが、この現象には「依存する先を一つしか持てない人が多い」という問題が横たわっているように思います。

パラレルキャリアを持つ、ということは自分に正直に生きるという点でも、とても重要な要件になりつつあると思います。